歯科治療中に意識障害が生じたら 歯科治療中の意識障害には,不安緊張や疼痛が誘因となって生じる脳貧血,過換気症候群,転換性障害の他に,局所麻酔薬によるアレルギー反応・中毒,エピネフリン過剰反応があることはすでに述べた.さらに,歯科治療がストレッサーとなり,狭心症や心筋梗塞を代表とする虚血性心疾患の再発,高血圧脳症,脳梗塞など,すでに存在していた全身疾患が増悪して生じるものがある. いずれにせよ,何が生じているかを観察し,瞬時に適切な対処をすることが大切である.そのためには,初診時の問診が重要であることは言うまでもない.たとえば,インスリン治療中の糖尿病患者が食事をとらずに来院し昏睡に陥れば,低血糖性昏睡を容易に予測できるし,狭心症患者が胸痛を訴えれば,ニトログリセリンを投与すればよいことは容易に想像できる.しかし,これらの情報がないとなると,診断は容易ではない. 救急処置を成功させるには,患者から情報を十分に聴取し,患者の全身状態を観察することが肝要である. いきなりユニットを倒して口腔内を診ることは極力避けて,まずはあいさつ代わりに脈拍でもとりたいものである.それだけで,患者が緊張しているか,血圧が高いか,発熱しているか,汗ばんでいるか,不整脈があるかなどがわかる上に,信頼感も増す。