書籍紹介
親知らずはなぜ抜くの?−お口の健康のための親知らずの治療
著:石井 正敏(新潟市・石井歯科医院)
A4判 上製本 カラー 32ページ 付録:CD-ROM
ISBN978-4-901894-46-3
定価5,040円(本体4,800円+税)
最近、矯正治療の増加等で抜歯の依頼が増えています。抜歯の前に、写真や図などを用いて患者さんの正しい理解を得ておくことが大切です。でも、抜歯に関する患者説明用絵本はありそうでありませんでした。本書は、智歯が引き起こすさまざまな害について、また抜歯の実際や抜歯前後の注意、さらに智歯を移植歯として活用する例などを、イラスト主体でビジュアルに解説しました。患者さんに納得・安心いただくためにぜひ活用ください!
付録に、プリントして患者さんに手渡しできる患者用説明文書が入ったCD-ROMが付いています。
付録CD-ROMの患者用説明文書をプリントして、患者さんに手渡してください。
目次
親知らずはなぜ抜くの? 目次
親知らずのはなし
親知らずが原因の不快症状
13〜14歳前後の親知らず
16〜17歳前後の親知らず
18〜20歳頃の親知らずの理想的な萌出状態
顎骨内に閉じこめられた状態の親知らず
親知らずの抜歯時期について
智歯周囲炎(親知らず周囲の炎症)
埋伏した親知らずの歯並びへの影響
親知らず,とくに埋伏智歯の抜歯
親知らずの移植歯(ドナー歯)としての活用
まえがき
親知らずのはなし
はたち(20歳)前後に,ほかの歯にくらべて遅れて生えようとしてくる奥歯があります.人生50年といわれた昔は,親が亡くなってから生えてくる歯であることから,「親知らず歯」と名付けられたようです.
歯科医はこの歯を第三大臼歯と呼んでいますが,智歯とも呼ばれています.この歯は口の最も奥のほうに,季節はずれといってよい時期に生えてきて面倒を起こすことが多い歯で,時に患者さん泣かせであり,時に歯科医泣かせの厄介ものである場合が多いのです.
親知らずは普通,上顎,下顎の左右にそれぞれ1本ずつ,計4本あるのですが,人によっては歯の原基がなくて全く生えてこない場合もあり,また1〜4本生えてくる人もいます.
一方,顎の骨の内部の隅の方でおかしな形になったり,曲がった方向を向いて一生生えてこない場合が多くあります.また,生えてきても,生える余地が少ないために,歯冠の一部だけが口腔内に頭を出してきたりします.この部分は歯ブラシなどでの清掃がしにくいためにむし歯や歯周病になりやすく,また反対側の歯や頬の粘膜にぶつかって痛みや不快感などの症状を起こします.このように,親知らずの周囲には炎症が起こりやすくなり(智歯周囲炎),とくに下顎の埋伏智歯は重症の感染症をきたす場合があり,含歯性嚢胞(濾胞性歯嚢胞)という歯原性嚢胞の原因になることもあります.男性よりも骨格がやや劣る女性では,より高い頻度で顎関節症をきたすこともあります.
このように,親知らずはその本来の物を噛むという機能を果たさないことが多いばかりでなく,身体の中の邪魔物となって害になっていることが多く,口腔の健康を維持するために抜かなければならない場合が多いのです.
しかしながら,親知らずの保存が移植歯(ドナー歯)として役に立つ場合もありますので,自家歯牙移植という治療法が存在することも知っておいていただきたいと思います.デンマークのDr. Andreasen,わが国の月星光博先生や下地勲先生らの臨床と研究から,現在では自家歯牙移植に関してその理論的背景と術式がほぼ確立されています.また広島大学病院では「歯の銀行」として移植歯を凍結保存する研究がなされるなど,従来矯正治療の目的でいわゆる便宜抜去された歯やその他の理由で抜歯された歯を凍結保存して,当該患者の将来に必要な状況が発生した時に移植歯として利用することも期待されています.
これから親知らずについて説明をしたいと思います.正しい知識をもっていただき,さまざまの状況の親知らずにどのように対応すべきかを知っていただければ幸いです.
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