書籍紹介
パノラマ診断ミニマムリクアイアメント
−パノラマ写真からの情報を最大限活用する−
編・著 橋本光二(日本大学歯学部放射線学教室)
  著 荒木正夫(日本大学歯学部放射線学教室)
    川嶋祥史(日本大学歯学部放射線学教室)

A4変型判 2色 108ページ
ISBN4-901894-39-0
定価5,250円(本体5,000円+税)

 パノラマ脳を鍛えよう!

 今回の保険改定で、患者さんに治療方針・治療内容に関する情報を提供することがますます要求されるようになりました。情報提供に用いられる資料の一つとして、パノラマ写真が非常に有効なのは言うまでもありません。これからはパノラマ像を読み取る力が一層求められるのです。また、パノラマ写真は主訴以外の部分も写し出しますので、患者さん自身が気づいていない疾患や異常を捉えていることがあり、それを見逃さずに読み取ることは臨床医の最低限の責務と言えます。患者さんへより良い説明ができるチカラ、異常像を見逃さず良性か悪性かを判断できるチカラ、つまりパノラマ脳を本書で鍛えてください!
 
       
目次

パノラマ診断ミニマムリクアイアメント 目次


はじめに


第1章 パノラマ写真からの情報を最大限活用するためのミニマムリクアイアメント

第2章 パノラマ写真の特性と診断のポイント
 パノラマ写真について 
  1.パノラマ写真の特性 
   1)細かい部分を描出する鮮鋭度は低く,いわゆる“ボケた”像である 
   2)拡大されている 
   3)解剖学的構造や人工的なものが重なって写っている(障害陰影) 
   4)エックス線入射角 
   5)正面からの像と側面からの像が合成され,さらに拡大されて作られている 
  2.デジタルパノラマ写真 
  3.パノラマ撮影時の患者位置付けによる画像の変化 
   1)正しい位置付け 
   2)頭部の前後的位置付けによる違い 
   3) 基準平面の設定による違い 
 パノラマ写真診断のポイント 
  1.診断の進め方 
  2.エックス線写真の所見の表現 
   1)病変の性状についての表現 
   2)病変の存在部位についての表現 
   3)いわゆる〜状という表現 
  3.良性・悪性の鑑別点 
   1)良性腫瘍や嚢胞でみられるエックス線所見 
   2)悪性腫瘍,炎症や線維性骨異形成症でみられるエックス線所見 
  4.パノラマ写真の像パターンによる疾患診断チャート 

第3章 正常像と障害陰影 
 パノラマ写真で正常構造はどうみえるか 
 注意しておくべき正常像 
  1.下顎管の下方走行 
  2.anterior loop 
  3.顎下腺窩 
  4.下顎骨の下顎切痕 
  5.舌 骨 
  6.蝶形骨の翼状突起 
  7.パノラマ無名線 
  8.上顎洞底部の形態の多様性 
 パノラマ写真の障害陰影 
  1.患者の位置付け不良による虚像(ghost image) 
  2.下鼻甲介の障害陰影 
  3.反対側下顎角部の重なり 
  4.金属製のアクセサリー等による障害陰影 

第4章 どう考える,このパノラマ写真−正常構造に変化がみられる 
 正常構造に変化がみられる1− 茎状突起過長症 
 正常構造に変化がみられる2− 筋突起過長症による開口障害 
 正常構造に変化がみられる3− 歯槽突起の吸収による上顎洞底や下顎管の位置の歯槽頂への近接 
 正常構造に変化がみられる4− 変形性顎関節症 
 正常構造に変化がみられる5− 上顎癌 
 正常構造に変化がみられる6− 炎症の下顎管への波及 
 正常構造に変化がみられる7− 右側下顎骨骨体骨折と左側下顎頭および筋突起部の骨折 

第5章 どう考える,このパノラマ写真−エックス線透過像がみられる 
 エックス線透過像がみられる1− 智歯の根尖性歯周炎から波及した下顎骨骨髄炎 
 エックス線透過像がみられる2− 歯根嚢胞 
 エックス線透過像がみられる3− 歯原性角化嚢胞 
 エックス線透過像がみられる4− 鼻口蓋管嚢胞(切歯管嚢胞) 
 エックス線透過像がみられる5− 術後性上顎嚢胞 
 エックス線透過像がみられる6− 単純性骨嚢胞 
 エックス線透過像がみられる7− Stafneの骨空洞 
 エックス線透過像がみられる8− エナメル上皮腫 
 エックス線透過像がみられる9− 歯原性粘液腫 
 エックス線透過像がみられる10− 上顎洞に発生した類腱線維腫 
 エックス線透過像がみられる11− 神経線維腫 
 エックス線透過像がみられる12− 下顎歯肉癌 
 エックス線透過像がみられる13− 歯肉に原発した癌 
 エックス線透過像がみられる14− 上顎洞癌 

第6章 どう考える,このパノラマ写真−エックス線不透過像がみられる 
 エックス線不透過像がみられる1− 腐骨 
 エックス線不透過像がみられる2− 慢性硬化性骨髄炎 
 エックス線不透過像がみられる3− Garreの骨髄炎 
 エックス線不透過像がみられる4− 根尖部の炎症による反応性骨硬化 
 エックス線不透過像がみられる5− 残根 
 エックス線不透過像がみられる6− 根尖性セメント質異形成症 
 エックス線不透過像がみられる7− 線維性異形成症 
 エックス線不透過像がみられる8− 石灰化物の形成を伴うエナメル上皮腫 
 エックス線不透過像がみられる9− セメント質・骨形成線維腫 
 エックス線不透過像がみられる10− 集合性歯牙腫 
 エックス線不透過像がみられる11− 内骨腫 
 エックス線不透過像がみられる12− 外骨腫 
 エックス線不透過像がみられる13− 顎下腺唾石 
 エックス線不透過像がみられる14− リンパ節内異所性石灰化 
 エックス線不透過像がみられる15− 上顎洞炎 
 エックス線不透過像がみられる16− 上顎洞底部の粘液嚢胞 
 エックス線不透過像がみられる17− 頸動脈壁の石灰化が現れたもの 
 エックス線不透過像がみられる18− 血管腫 

第7章 どう考える,このパノラマ写真−パノラマ写真に現れる全身疾患の徴候 
 パノラマ写真に現れる全身疾患の徴候1− 鎖骨頭蓋異骨症 
 パノラマ写真に現れる全身疾患の徴候2− Papillon-Lefevere症候群 
 パノラマ写真に現れる全身疾患の徴候3− 腎性骨異栄養症 
 パノラマ写真に現れる全身疾患の徴候4− 骨髄性白血病 
 パノラマ写真に現れる全身疾患の徴候5− 歯原性角化嚢胞が多発した例 
 パノラマ写真に現れる全身疾患の徴候6− 骨形成不全を伴わない象牙質形成不全症 
 パノラマ写真に現れる全身疾患の徴候7− Gardner症候群 

まえがき

はじめに

 W.C.レントゲン博士がエックス線を発見し,骨の中の状態を透過して観察できるようになってから110年を経過した.この間,画像診断の分野の進歩はめざましく,1970年代にはエックス線CT装置,1980年代には磁気共鳴映像装置(MRI)が開発,使用されるようになり,さらにはがん診断のためのPET装置が臨床使用されるようになるなど,画像診断の重要性はますます増加している.歯科の分野においても1990年代にインプラントなどの診断に有用な歯科用CT装置が開発され,臨床に応用されてきている.しかしながら,一般歯科診療をおこなう歯科医師にとって,デンタルエックス線写真そしてパノラマエックス線写真が依然としてエックス線診断において大きな役割を担っているのは言うまでもないことである.
 歯科医師はパノラマ写真を歯およびその周囲の歯槽骨を観察するために利用することが多い.しかし,上下顎骨の状態はもちろん,上顎洞や顎関節,埋伏歯などの状態について,またパノラマ像上の「線」から顎骨の破壊状況などについて診断できれば,自覚症状を訴えない患者さんに対し情報を提供して早期に治療をおこなえるなど,患者さんに大きな利益を及ぼすことが可能である.逆に,パノラマ写真を撮影した以上は,こういったことをおこなわなければ,患者さんにとって大きな不利益であるとされるようになるであろう.
 昨今,診療開始にあたって患者さんへの治療計画,治療内容などの説明を十分におこない,その後治療に対しての同意を得るインフォームド・コンセントがさらに要求されるようになってきている.その説明においても,パノラマ写真の特性を良く理解したうえでの診断および治療についての説明が必要となるであろう.本書がその一助となれば幸いである.

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