書籍紹介
実践! 長期間の小児歯科
−楽で楽しい子どもとの接し方・無痛的治療・予防・定期検診の実際−
著:岡本 誠(岡本小児歯科医院)

A4変型判 カラー 128ページ
ISBN4-901894-36-6
定価5,250円(本体5000円+税)
 う蝕罹患率が低下した今,患児一人一人のう蝕発病原因の診断が可能となり,より理想的な治療・予防(原因療法)・定期検診による管理,つまり「長期間の小児歯科」がおこなえるようになりました.本書は,子どものこころの分析と無痛的治療による楽で楽しい小児の歯科治療の手順,さらに著者の30年以上の臨床経験から導き出された臨床的エビデンスに基づく必要最小限の楽で楽しい予防方法・定期検診について解説しました.長期間の予防歯科は,患児も養育者(親)も歯科医師もスタッフも,みんなが楽で楽しい!
 
       
目次

実践! 長期間の小児歯科−楽で楽しい子どもとの接し方・無痛的治療・予防・定期検診の実際− 目次

第1章 子どもの「こころ」
 1.子どもの「こころ」の養育の重要性
  1)乳幼児期の「こころ」の養育
  2)学童期の「こころ」の養育
  3)青少年期の「こころ」の養育
 2.子どもの判断力を養う
  1)0〜3歳の頃−泣く子にはかなわぬ…の時期
  2)4〜10歳の頃−「養育者の顔」で判断する時期
  3)11歳〜の頃−養育者の背中を見て育つ時代…相談相手になるべき時期
 3.子どもとの会話の特徴−こころを育てる会話のために
  1)成長の一里塚 −1たす1は3? 猫は犬?
  2)言葉遊び的反応 −「うんこ」から「うざい」まで
  3)「ほめる」ことの重要性
  4)子どもへの説明について
    子どもに理解できるように?/子どもにうそをつかない?/言ってはならない「うそ」
 
第2章 子どもと歯科との出会い
 1.子どもと歯科医師との出会い 
  1)認知(あいさつ)から始めよう 
  2)歯科における「認知」から「良い判断」,「友達関係」への誘導 
  3)友達関係から歯科治療への誘導 
 2.歯科医院での出会いの工夫と実際 
  1)初診時の重要性と実際 
  2)外からの評価をリ−ドする−出会いの前の工夫 
  3)その他のいくつかの工夫 

第3章 長期間の小児歯科 
 1.「長期間の小児歯科」の必要性 
 2.う蝕の本当の治療−「長期間の小児歯科」とは 
 3.う蝕の本当の治療の魅力 
 4.治療としてのう蝕予防の時代へ 
 5.「長期間の小児歯科」のためのシステムとは 
 6.「長期間の小児歯科」のシステムの実際 
  1)システムを構築する時の基本 
    医院ぐるみで取り組む/患児から学ぶ−長期の検診記録をとる/歯列の育成は慎重に/
    予防の指標をもつ/子どもとの接し方は正しく
  2)システムの実際 

第4章 治療時の工夫と実際−子どものこころに基づいた楽しい治療の展開 
 1.楽で楽しい治療(接し方)の基本 
  1)「理解・信頼」を確立させる 
    4歳〜10歳児の「理解・信頼」とは/3歳以下の子どもの「理解・信頼」とは/
    11歳以上の子どもの「理解・信頼」とは 
  2)「無痛的歯科治療」のための痛みのコントロ−ル 
    治療時の刺激量を減少させる/治療時の閾値を高く保つ−3Pコントロ−ル/ 
    恐怖心をコントロ−ルする 
 2.楽で楽しい無痛的治療の実際 
  1)治療の基本的な流れ 
  2)写真で見る治療のテクニックの実際 
  3)退室時の工夫と実際 

第5章 定期検診の工夫と実際−臨床的エビデンスに基づいた長期間の小児歯科の展開 
 1.う蝕成因論(etiology)−Millerの化学細菌説について 
  1)「細菌」について−臨床的エビデンスから考える 
  2)「食物残渣」,「歯質」,「時間」について−臨床的エビデンスから考える 
 2.エビデンスに基づくう蝕発病論について 
  1)う蝕発病論の基本 
    抵抗力について/攻撃力について
  2)指導のためのう蝕発病論=OS時間 
 3.定期検診の実際 
  1)定期検診のお知らせ 
  2)定期検診の仕方 
 4.定期検診からわかること −臨床的エビデンスとして
  1)OS時間による定期検診は患児が長期間来院する 
  2)OS時間による予防は効果的である 
    砂糖を含む食品の摂取方法のみの指導である/1日量を基準として指導する/
    1日量は基準,1か月に数日は乱れてよい 
  3)罹患率が低下すると,う蝕症の本態が見えてくる 
    年齢により発病部位が決まっている/発病した部位により原因を特定できることが多い/
    防ぎにくい歯種は決まっている/中学生からは個人差が大きくなる 
  4)さらに他院の予防方法との比較から学ぶ 
 5.長期間の小児歯科におけるプロフェッショナルケアとは 

はじめに

はじめに

近年,小児の人口が減り,加えて歯科疾患の減少と歯科医師数の増加などもあり,理想的な子どもへの歯科治療が可能になってきている.にもかかわらず,子ども達への歯科治療は苦痛の場との評価は変わらず,泣く子や,もう来ないと思う子がいるのは,余りにも時代後れの接し方や歯科治療がおこなわれているからだといえる.もし反対に,楽な接し方で近代的な治療がおこなわれれば,子どもへの歯科治療は口腔を健全に保つだけでなく,子どものこころを育てる願ってもない養育の場にもなりうる.したがって,これからの子どもの歯科治療は,子どものこころを育てる楽で楽しい接し方での近代的な治療が,主流となるべきである.
残念なことに,子どもへの歯科治療はかなり苦痛に満ちており,痛い治療や強制的な治療がおこなわれると多くの人々は思っている.それは,我々歯科医師の治療に関する誤った思い込みに起因している.歯科医師は“治療”だから,“怖がり”だから,“子ども”だから,「痛がったり,泣くのは仕方がない」と思い込んでいないだろうか? この思い込みこそが,人々に歯科治療への不安や誤解を引き起こしている.もし歯科治療が痛くなくでき,歯科医師自身も“痛くないように”,“怖がらないように”,“子どもだからよりていねいに”と配慮したらどうだろう.人々の恐怖や不安の半分は消えるだろう.
 さらに,罹患率の低下で,近代的な歯科治療では発病した部位を削って詰めるだけでなく,発病の阻止も「長期間の小児歯科」で可能な時代になってきた.一般論ではなく,その子どものう蝕の原因を除去し発病を防ぐという原因療法としての予防を歯科治療に加えることができる.したがって多くの歯科医師がこの「長期間の小児歯科」を実践し,発病の阻止に力を入れれば,人々の歯科治療に対するイメ−ジそのものも一変するであろう.  
 21世紀においては,楽で楽しい無痛的治療を実践し,子どもに自信を与える近代的な「長期間の小児歯科」が歯科医療として望まれる.あるいは,接し方の困難な子どもは無理やりな治療より,他院を紹介したり科学的方法で対応すべきである.また,近代的な「長期間の小児歯科」で,限りなくう蝕がない世界を歯科医師の努力で実現したいものである.         

 「僕,治してもらったよ,ぜんぜん痛くなかったよ」,「見せて,見せて,わあすごい.お母さんの子どもの頃はどうだったかしら」,「○○君,むし歯ないよ,合格.また定期検診に来てね」.
 毎日聞こえてくる小児歯科医院での普通の会話.この「わあすごい」という最大級のほめ言葉に,上機嫌で自信たっぷりに帰っていく患児.さらに,「長期間の小児歯科」で予防管理し,永久歯にはむし歯がほとんどなければ,長期間その子に関与した歯科医師として満足感に満たされるであろう.これこそが,子どものこころを育てる楽で楽しい接し方での近代的な歯科治療なのである.

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